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2019年03月11日

「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」を読んで人生観を見直してみた

読書

流行語大賞2017にノミネートされた「人生100年時代」の元ネタとなる「LIFE SHIFT」を遅ればせながら読んでみました。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

この本では、100年時代を生き抜くために、我々がどうすれば良いのか、著者のリンダ・グラットン(心理学者)とアンドリュー・スコット(経済学者)の2人の考察が事細かにまとまっています。
その考察は確かなデータを根拠に語られているので、非常に説得力があり、私も人生観に大きく影響を与えられました。
本エントリーではその一部をご紹介します。

問題提起

寿命の推移

この本の考察の前提となる解説です。
現在は10年ごとに平均2-3年のペースで平均寿命が伸びており、このまま続けば今の20代は平均寿命が100歳となります。
「日本 平均寿命」でggってみると以下のような推移となっていることがわかります。

日本の平均寿命の推移

日本の平均寿命の推移


長寿化の要因としては、医療技術の進化はもちろんのこと、健康に対する意識の変化等も挙げられるようです。
問題は平均寿命の伸びに上限があるのかということですが、右肩上がりに一定のペースで伸びていることを考えると、平均寿命は110歳から120歳くらいまで伸びると考えることはごく自然な予想のように思えます。
100歳まで生きるとは・・・わくわくするような気が重いような。。。
まわりの同世代(20代)に話を聞くとあまり、100歳まで生きることは想定できていない人が多いように思えます。大丈夫かな。

長寿化により顕在化する問題

老後資金

現在と同じように、仕事を65歳で引退すると仮定すると、引退後から死ぬまでに平均35年間余生を過ごすことになります。
平均寿命が約84歳である2016年と比較すると、16年間も差があるわけですから、生活水準を下げないとすれば、必要な貯蓄額も当然多くなります。
LIFE SHIFTではお金の計算の例として、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンの3つの世代で、以下の仮定に基づき必要な貯蓄額がどの程度のものなのかを算出しています。

  1. 老後の生活資金・・・最終所得の50%
  2. 長期の投資利益率・・・年平均3%
  3. 所得上昇ペース・・・年平均4%

まず、平均寿命が約70歳である世代のジャックですが、例では62歳で引退し、8年の引退生活を送る計算をしています。
この時代は高齢化もなく、公的年金や企業年金がうまく機能しており、最終所得の40%は年金制度で賄うことができました。
故に、勤労期間に毎年所得の4.3%を貯蓄すれば、希望するだけの老後資金を確保できていました。
次におよそ平均寿命が85歳の世代であるジミーですが、65歳で引退すると仮定した場合、寿命までの引退生活をあと20年送るためには、毎年17.2%を貯蓄しなくてはなりません。
引退期間が長いことの他に、ジャックと違い企業年金も用意されていないことがほとんどであるため、公的年金を計算に入れても、自力で最終所得の40%分を貯蓄する必要があるからです。
最後にジェーンですが、100歳生きると仮定する場合、引退期間が35年となり、公的年金がうまくいくと仮定しても毎年所得の25%もの金額を貯蓄しないといけない計算となります。
しかも、公的年金はこの世代になると高齢化の影響でうまく機能しない可能性が高く、廃止されると仮定すれば必要な貯蓄率は31%にまで跳ね上がります・・・
私が一番年齢的に近いのはジェーンですが、家を買ったり子供が出来ることを考えると相当きつい数字が出ていますね汗

引退生活の退屈さ

100歳生きるという前提で考えれば、引退を65歳でしてしまうと、35年もの引退生活が過ごすことになります。
35年は引退生活としてはとても長く、仕事でもしていないと気がおかしくなりそうです。
引退者たちを調べた実験では、不活発な生活を長期間続けている人は、認知能力が低下したり、人生に対する満足度が低下することもわかっているそうです。
私は27歳なので、今までの人生をやり直したとしてもお釣りが来ると考えればすごく長いと感じます。 今でも仕事以外で、あんまり趣味とかないしなぁ笑

今後求められる生き方

自分の親の世代までは、20歳前後まで教育を受け、20歳から65歳までは仕事を行い、65歳から死ぬまでは引退生活をのんびり過ごす、3ステージ型の人生を歩む人がほとんどでしたが、寿命が伸びるにつれ、前述のように65歳で引退するモデルはうまく機能しなくなる可能性が高いです。
先程のジェーンの例で、毎年の貯蓄額を現実的に所得の10%程度で済むようにするためには、引退時期を80代にまで伸ばすことになります。
つまり、30年長く生きられる代わりに20年勤労期間を伸ばす必要があるということです。
ここで問題になるのが、現在の週5日8時間ずつ働く生活を60年休憩無く続けられる人がいるのかということです。
このように考えると長寿化が呪いのように感じられ、今までの世代の生き方ではおそらく長寿化の恩恵は得られないことが想像できます。

必要な資産

LIFE SHIFTではお金や不動産など、形のある資産を有形資産、自分のスキルや交友関係や活力といった目に見えない資産を無形資産と分類し、今後どのような資産が必要となるかを考察しています。
結論から言うと今まではお金などの有形資産が重視されていましたが、今後はスキルや交友関係などの無形資産がものをいう時代になるものと著者は考えているようです。

無形資産と100年時代における必要性

先術のように、今後は65歳で引退する人を増え、80代まで働かざるを得なくなりますが、今までのペースで同じ仕事をやり続けられるかといえばそれは難しいと思います。
そこで、今後の生き方としては今までの教育・労働・引退の3ステージ型から、年齢とステージが結びつかないようなマルチステージ型への移行する人が予想されます(LIFE SHIFTでは「エイジ(年齢)とステージが結びつかなくなる」と何回も主張しています)。
そこで必要となってくるのが無形資産と著者が呼ぶ資産で、生産性資産・活力資産・変身資産の3つの種類の無形資産が説明されています。
生産性資産とはスキルと知識・仕事仲間・評判(ブランド)など、所得とキャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産のことです。
60年も勤労期間があれば、労働市場も変わるでしょうし、必要となるスキルもテクノロジー等に合わせて変わっていきます。
勤労期間が短かったジャックの世代では、学生時代に学んだスキルだけで勤労期間を乗り切れていましたが、ジミーやジェーンの世代ともなると、生産性資産への再投資が必要になってくることは明白です。
活力資産とは健康・家族・友人・愛など、肉体的・精神的健康と心理的幸福感に関する資産のことです。
60年ハードに休みなく働き続けられる人はおそらくいませんが、それはこの活力資産が消費されるためです。
例えば、有形資産や生産性資産など他の資産のみに投資をし続けると、「仕事と私のどっちが大事なのよ!」的な感じになりかねませんもんね。
変身資産とは人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことです。
例えば、自分のアイデンティティを確立していることや、多様性に富んだ人的ネットワーク、新しい経験に対して開かれた姿勢が挙げられています。
勤労期間が長い故に、スキルの再投資で大学で学び直したり、時にはハードに企業で働いたり、企業したり、など多くの移行期間を経験することになります。
そのために、変身資産は無くてはならないものとなります。

まとめ

親の世代を見て、なんとなく80まで生きられれば良いや、とか、65歳には引退なのかな、とか、漠然と考えていた私ですが、どうやらそうでない可能性が高いことに「LIFE SHIFT」を読んで今更気付かされました。
ここで紹介したことはLIFE SHIFTのほんの一部ですが、特に若い世代は一度読んでみることをおすすめします。
この本には100年時代の生き方の考察のほか、資産を形成するための行動の選択肢のヒントがたくさん散りばめられています。
あと、個人的に印象に残ったのは健康に対する投資の部分です。
元気に80代まで働ける人と、65歳で思うように考えられなくなったり、動けなくなる人では総所得に大きな影響が出るのは言われてみれば当たり前なのですが、そもそも健康に対して「投資する」という感覚が無かった自分にとっては衝撃的でした。
今はお腹ぶよぶよになっちゃってますが、この本が筋トレやランニングを再開する良いきっかけにもなりました。
おすすめです。